子供のスポーツは何の為?

バレーボール大山加奈が苦しむ"後遺症"の過酷

益子直美さんと考える「バレー界を変える方法」

https://toyokeizai.net/articles/-/371832

 

リンクが切れた時の為に以下にペーストしておきます。

熱心な指導者、お子様のスポーツに熱心なご家族の方に是非読んでいただきたいです。

 

以下引用

 

スポーツの目的の1つは健康体でいるためなのに…

――大山さんは26歳で現役を退かれました。非常に早い引退の背景には、重いスポーツ障害があったと聞いています。

大山加奈(以下、大山):脊柱管狭窄症ですね。通常はご高齢の患者さんがほとんどなのに、20歳そこそこで発症してしまって。(医師からは)小学校の頃からのオーバーユースで、体が出来上がる前からスパイク動作を繰り返してきた影響だと言われました。

益子直美(以下、益子):今でも痛いんだよね?

大山:そうですね。しびれを感じることはあるし、歳を重ねていくにつれ不安ですね。

益子:スポーツの1つの目的は健康体でいるためなのに。本末転倒だね。

大山:バレーボールをやれて本当によかった!ってうれしい反面、バレーをやってきたせいで……と思うことも正直ありますね。この経験は絶対に無駄にしちゃいけない。バレーを選んでくれたすべての子どもたちを幸せにしたい。バレーやってよかったなって思ってもらいたい。そんな思いで活動しています。

――益子さんはメンタルトレーニングのコーチ資格取得などの過程で、多くの指導者と交流がありますね。

益子:パワハラ的な指導をしてきたけれど、いろいろとご自分で学んで変わろうとするコーチや監督さんにたくさん会ってきました。例えば、高校バレーの元監督さん。指導歴41年のうち前半は怒る指導、後半は選手の自主性を基にした指導をしてきたそうです。怒ったり、殴ったりに依存する中毒のようなものだったかもしれない、と。

変わるきっかけは、選手たちのボイコット。全員やめると言ってきたことでした。 以来、今日こそ怒らない、殴らないと心に決めて体育館に行きつつ、後半にペップトーク(シンプルな言葉を使って人のやる気を引き出すアメリカ発祥のメソッド)に出会って変われたと聞きました。

大山:きっかけさえあれば、変われるんですね。

益子:選手を褒めたらすごく目が輝いて自分から取り組み始めた。それを見て指導の仕方を変えたという高校野球の監督さんもいた。指導者もきっと心のどこかで「このやり方じゃない」と思ってると私は信じてるの。だから諦めずに活動し続けたい。

子どもだからといって全部教える必要はない

――「益子直美カップ 怒らないバレーボール大会」での気づきは何かありますか?

益子 直美(ますこ なおみ)● 元バレーボール全日本代表選手、タレント、スポーツキャスター。
1966年5月20日生。東京都出身。中学入学と同時にバレーボールを始める。共栄学園に進学し春高バレーで準優勝し、3年生の時に全日本メンバー入りを果たす。卒業後はイトーヨーカドーに入団。全日本メンバーとして世界選手権2回、W杯に出場を果たす。1992年に現役を引退。 現在はタレント、スポーツキャスターなど幅広く活躍。現在、福岡県で毎年小学生を対象にした監督が絶対に怒らないことをルールにした「益子直美カップ小学校バレーボール大会」を開催

益子:益子カップが終わった後、子どもたちからもらったお手紙を読むと、すごく成長を感じるんです。「監督が怒らないから、今まで強気で打てなかったボールにチャレンジできた」とか「取れないと思ってたボールに飛び込んでみたら取れた」とか。それに「監督が怒らないからといって甘えずに、コートの中では自分たちで考えて声を出しました」とか。

大山:自立心も育ってるんですね。

益子:そうなの。小学生でもこうやって、考えることができるんだなっていうことにすごく感動して。それを先生(コーチ)たちにも伝えるんです。そうすると、皆さん「そんなこと思ってたのか」とびっくりして。子どもだから全部教えてあげないと駄目だって思ってたけど、違うんだ、って。

大山:一から十まで教えなきゃって思うんですよね。

益子:でも、ただ怒らないっていうルールがあるだけで、こうやって成長してくれる、自分で考える。そこに本当にびっくりしたって言ってもらったとき、大会を続けてきてよかったなって思いました。

――益子さんは指導者の姿勢や態度の改革に取り組んでいますが、練習の中身にも課題がありそうです。

大山:追い詰めるような練習っていうのが、まだまだありますね。バレーボールには「ワンマンレシーブ」っていう特徴的な練習があって。あれはなくしていったほうがいいと個人的には思っています。

益子:1人の選手が、打たれたボールをレシーブし続ける練習だね。ひたすら倒れるまで。

どうすればバレー界は変われるか

――3年前に大阪の府立高校で部員の顔に繰り返しボールを当てる映像がインターネットに投稿され、「虐待ではないか」と問題になりましたね。ただ、バレー経験者から「あの練習のおかげでうまくなった」と肯定するSNSでの書き込みもありました。

大山 加奈(おおやま かな)● 元バレーボール全日本代表選手、スポーツキャスター、バレーボール教室講師。
小学校2年生からバレーボールを始め、小中高全ての年代で全国制覇を経験。高校卒業後は東レ・アローズ女子バレーボール部に入部した。 日本代表には高校在学中の2001年に初選出され、オリンピック・世界選手権・ワールドカップと三大大会すべての試合に出場。 力強いスパイクを武器に「パワフルカナ」の愛称で親しまれ、日本を代表するプレーヤーとして活躍した。 2010年6月に現役を引退し、現在は全国での講演活動やバレーボール教室、解説、メディア出演など多方面で活躍しながら、スポーツ界やバレーボール界の発展に力を注ぐ。

大山:ワンマンレシーブという練習は暴力を招きやすいと思っています。ちゃんと目的があってやる練習であればいいんですけど、そうではないワンマンレシーブのほうが圧倒的に多いと感じています。私は中学、高校ではまったく経験していなくて、卒業してからやる機会が多くなった。

益子:今でも、ごく普通にやってると思うな。加奈ちゃん、ほかにはどうすれば、バレー界が変われると思う?

大山:私は、全国大会のシステムを変えていかないと、現場は変わらないんじゃないかと思っています。私自身、小中高と日本一をひたすら目指して、日本一にならせてもらったからこそそう思うんです。小学校から日本一を目指すことが本当に正しかったのかな?って。

――一発勝負のトーナメント方式は、大人の熱を過度に上げますよね。ついつい無理をさせてしまう。整骨院に行くと、小学生が電気かけたりとかしてますよね? 

大山:私も行ってました。小学校の頃から。外国の人が見たら、たぶん虐待だって言いますよね。ある保護者の方は娘さんが腰椎分離症だと。チームのほかの子もみんな故障を抱えていると言ってました。

益子:小学生の練習時間や方法は見直さなくてはいけないね。

――海外のバレーから学ぶことはありませんか?

大山:引退をして、海外の選手たちの練習を大会のときに見させてもらう機会が増えました。ほかの国は、選手が監督と対等だと実感しますね。とくに世界のトップチームはそうですね。中国やアメリカなど、強ければ強いほど対等なんです。

益子:具体的にどういうところでそう感じるの?

大山:選手が何か思ってることがあったらすぐ監督のところに言いに行く。意見するんですよね。監督もそれを聞いて、対等に話し合ってる。何を話してるかはわからないですけど、話し合ってるっていうのがわかる。あの郎平さんでさえそうなので、いつもすごいなと思いながら見ています。

――選手として中国の女子バレー最高のスーパースターで、現在の監督ですよね。

大山:中国はもちろん、海外の選手たちはとにかく自分たちで盛り上げて、盛り上げて、みんなで試合に向かっていこうっていうのが伝わってくる。バレーを本気で楽しんでます。

益子:私は現役時代から、海外とは大きな違いを感じていました。今でこそブラジルやアメリカは世界のトップオブトップですが、当時は基本的な技術が身に付いていなくて。ジャンプが逆足だったり。そこだけ見ると、日本のほうが絶対に基本に忠実で、パスも正確でした。

大山:そうだったんだ。あっという間に強くなりましたね。

益子:そうなの。技術は粗削りなんだけど、フルセット目の13対13とか、そうやって競ったときはめちゃくちゃ強いの。例えば、私なんかそういう大事な場面になると「もう私のところにはトスを上げないでほしい」って願ってるわけ。エースなのに、ノミの心臓なんです。

――なぜならば、ミスしたら怒鳴られるから、練習や普段の試合で自分自身でトライしていない。だから、自信が育ってなかったんですね。それに、そこでもミスしたら責められる文化ですものね。

益子:そう。だから、どうしよう、っていうのがあって。でもアメリカの選手って、みんな、「私に持ってこい!」って全員が自分にトスを要求するんですよ。

大山:「カモン! カモン!」って言ってますよね。

益子:もうそれが本当にすごい。どういうバレーをしてきてるんだろう?って衝撃でしたね。だから、現役のときからアメリカはこの先絶対に強くなる、怖いってずっと思ってたら、やっぱり強くなった。

――日本も、自信のない選手を否定するのではなく、選手の自信を育てる指導を目指さなくてはいけませんね。そのためにも、育成期に「バレーが楽しい!」という感覚を根付かせてほしいです。益子カップはその点で進化していますね。

益子:いま6回。4回目くらいまで優秀選手賞みたいなのがあったのですが、少し前から「スマイル賞」に変わりました。「監督スマイル賞」もあります。

大山:すごくいいですね!

益子:10回は開催しようと決めてるの。あと4回。10回目大会はたぶん点数をつけていないと思うな。

コロナで全国大会がなくなったときの衝撃の本音

――大山さんはSNSを通じて、中高生など若い選手と交流されていますね。

大山:コロナで全国大会がなくなってみんな悲しい思いをしてるんだろうな、と勝手に想像してたんですけど「全国大会がなくなってホッとした」っていう高校生からの声が届いたんです。私自身強い衝撃を受けましたが、本人も「こんなふうに考えてることはおかしいんじゃないか」「自分は間違ってるんじゃないか」って落ち込んでいました。

益子:コロナがきっかけで、自分のバレーとの向き合い方に気づいたんだね。

大山:それをツイッターに書いたところ、「僕も」「私も同じです」と共感する声がいっぱい集まって。保護者の方から「うちの子もです」という声もたくさん届きました。全国大会がなくなってホッとする子がこんなにいるんだと思ったら、バレー界を本当に何とかしなきゃいけないなと思わされました。こちらの想像だけで物事を捉えちゃダメだ、きちんと声を聴かなきゃいけないなって。

益子:本当にそう。子どもたちの話を聴かなきゃいけないよね。

大山:ホッとしたって言ってきた高校生からは、「こういうバレー界じゃなくて、もっと子どもたちが楽しめるようにしてください」っていうことも言ってくれたので、「頑張るよ。必ず変えるからね」っていうことを伝えさせてもらいました。